知らない間にここまで進化している!?復帰したグランドセイコー信者が「SLGW007」を出来るだけわかりやすく語る。ムーブメント編。
皆様こんにちは。
いつもoomiya京都店のブログをご覧いただき誠にありがとうございます。
本日は先週公開した記事の続編となります。
もし前回のブログをご覧いただけていない場合は下記のリンクからご覧ください!
前回はデザイン編。
今回はムーブメントに着目してご紹介いたします。
今回ご紹介するのはこちらのモデル。

9Sメカニカル ハイビート 36000
品番:SLGW007
価格: ¥1,342,000 (税込)
ムーブメント: 自動巻き(9SA4)
ケース素材: ステンレススチール
ベルト :カーフベルト
防水:日常生活用防水
サイズ: 38.6mm
その他特徴
最大巻上時約80時間持続
静的精度:平均日差+5秒~-3秒
パワーリザーブ表示機能
耐磁
秒針停止機能
裏ぶたに獅子の紋章つき
ムーブメント良し悪しはどう判断する?
機械式時計にとって「ムーブメント」とは、まさに命そのもの。
針を動かすための部品群ではなく、その時計の思想や価値観までもを内包する中枢です。
優れたムーブメントを自社で生み出せるブランドは、必然的に時計業界において大きなアドバンテージを手にします。
設計思想、精度への責任、そして長期使用を前提とした信頼性――すべてを自ら背負うからこそ、その時計には揺るぎない説得力が宿るのです。
では、「優れたムーブメント」とは何を指すのでしょうか。
多くの場合、まず語られるのは精度。
日差が安定し、環境変化にも強いことは、時計として当然求められる資質です。
一方で、工芸品としての価値――仕上げの美しさや造形の完成度も、高級機械式時計では重要な評価軸となります。

しかし、この二つを高い次元で両立させることは、決して容易ではありません。
精度を突き詰めれば無機質になり、美しさを優先すれば実用性が犠牲になる。
そのジレンマの前で、多くのブランドはどちらか一方を選ばざるを得ないのが現実です。
だからこそ、グランドセイコーのムーブメントは特別なのです。
実用精度と審美性、そのどちらも妥協しない。
“動く工業製品”でありながら、“鑑賞に値する工芸品”でもある。
その矛盾を成立させてしまう点にこそ、
グランドセイコーが時計業界で一歩、いや二歩先を行く理由があるのです。
グランドセイコーは世界基準の3歩前を走っている?
さてとんでもないことを言い始めたと思うかもしれませんが、納得に値する証拠をお見せします。
①グランドセイコー規格(GS規格)
グランドセイコー規格は、セイコー独自の厳格な品質基準であり、以下のような特徴を持ちます。
- 精度基準 GS規格では、機械式ムーブメントの精度を「日差 -3秒〜+5秒」に設定。この基準はスイスのクロノメーター規格(COSC)の「日差 -4秒〜+6秒」よりも厳しく設定されています
- 検査環境 GS規格では、17日間にわたる厳密なテストを実施。6姿勢(縦・横などの異なる角度)と3つの温度環境(6℃・23℃・38℃)で測定を行い、安定した精度を確認します。
- 個別検査 グランドセイコーのムーブメントは、一つひとつ厳格な検査を受けて合格したもののみが時計として組み立てられます。スイスのクロノメーター規格はムーブメント単体の検査ですが、GS規格ではムーブメントを時計に組み込んだ後でも最終的な精度チェックを実施します。
- 長期安定性 単に出荷時の精度だけでなく、長期間にわたって安定した性能を維持することが求められます。そのため、高耐久性の素材や独自の潤滑技術を採用し、実用時計としての信頼性を追求しています。
②審美性を追及したムーブメント
グランドセイコーと聞いて、多くの方が思い浮かべるのは外装――
研ぎ澄まされたケース造形や、光を操る独自の「セイコースタイル」かもしれません。
しかし、あまり語られることはなくとも、確かに存在しています。
グランドセイコー独自のムーブメント仕上げの美学が。
その象徴が「雫石川仕上げ」です。

雫石の工房から実際に望むことのできる雫石川。
その穏やかな流れを写し取った地板のストライプと、
川の中で光を反射しながら輝く小石を思わせるルビー。
一方向から見ただけでは、その本質はわかりません。
角度を変え、光を受けて初めて、
“流れ”と“きらめき”が立体的に浮かび上がる。
それは単なる装飾ではなく、確かな情景描写です。

スイス時計における「コート・ド・ジュネーブ装飾」が
ジュネーブ湖(レ・マン湖)の湖畔に寄せる波を表現する技法だとすれば、
雫石川仕上げが描くのは、より静かで、より繊細な自然の気配。
波の力強さではなく、
水の流れそのものが持つ“間”や“余白”を美として昇華しています。
そして特筆すべきは、
「エボリューション9 コレクション」発表時に、この仕上げが大きく進化した点。
伝統を守るだけではなく、現代的な解釈を加え、精度・構造・美観すべてにおいて再構築されたのです。
過去に安住しない。
美しささえも、進化させ続ける。
外からは見えにくい場所でこそ、徹底的にこだわる。
その姿勢こそが、グランドセイコーが世界をリードし続ける理由なのです。
グランドセイコーはムーブメントは狂気じみている
グランドセイコーは、今回のキャリバー「9SA4」を完成させるにあたり、
ムーブメント好きであれば思わず息をのむような二つの進化を与えてくれました。
その一つが、「コハゼ」の形状です。
コハゼとは、機械式時計の動力源である主ゼンマイを巻き上げた際、
すぐにほどけてしまわないよう逆回転を防ぐための、いわば“縁の下の力持ち”のような部品。
機能としては極めて重要でありながら、通常は意匠が語られることのない存在です。

なぜなら、多くのブランドにとって
「部品のデザイン=精度向上」に直結しないから。
良い時計の指標を“精度”に置く限り、コハゼは機能していれば十分――
それが時計業界の常識でした。

しかし、グランドセイコーはそこに意味を与えます。
9SA4のコハゼに込められたモチーフは、
岩手県雫石町で見られる野鳥、セキレイ。

手巻き操作をした際、コハゼがリズムよく動く様は、
まるでセキレイが地面をついばむ姿そのもの。
実用上は誰も気づかなくてもいい。
それでも「そう在るべきだ」と考え、形にしてしまう。
これは装飾のための装飾ではありません。
ムーブメント全体で自然と土地の記憶を語る、
グランドセイコーらしい“思想としてのデザイン”です。

見えない部分にこそ、物語を宿す。
精度だけでは語れない価値を、あえて内部に忍ばせる。
9SA4は、単なる高性能ムーブメントではなく、
日本の自然と感性を内包した「語るムーブメント」なのです。
そして、もう一つ。
9SA4がもたらした進化の核心とも言えるのが、手巻きの感触です。
時計好きにとって、手巻きの感触は単なる操作性ではありません。
それはムーブメントと持ち主が直接対話する、最も原始的で贅沢な時間です。

自動巻きのように“任せる”のではなく、
自らの指でゼンマイを巻き上げ、
一日を動かすエネルギーを与える。
だからこそ、毎日の動作に心地よさがなければ意味がない。
9SA4の手巻きは、ただ軽いだけでも、ただ重厚なだけでもありません。
巻き始めから終わりまでトルクがなだらかに変化し、
指先に伝わる感触は驚くほど滑らか。
思わず「もう少しだけ」と、意味もなく巻き上げたくなる――
そんな中毒性すら感じさせます。

この感触は、カタログや数値では決して伝わりません。
写真でも、文章でも、完全に表現することはできない。
だからこそ、答えはいつも店頭にあります。
静かな空間で、リューズに指をかけ、
一段一段、時を与える感覚を味わっていただきたい。

グランドセイコーがこの感触にここまでこだわった理由は明確です。
時計は「身に着けるもの」である前に、
「触れるもの」であり、「付き合うもの」だから。
9SA4は、眺めて美しく、使って楽しい。
そして、触れるたびに所有する喜びを再確認させてくれる――
そんな稀有なムーブメントなのです。
現在開催中のグランドセイコーフェアも是非ご活用ください!


