3000度の炎と1週間の手仕事【クストス】サファイアクリスタルの秘密

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前回の記事では、「メトロポリタンP-Sスケルトンサファイア」の魅力と、サファイアクリスタルケースができるまでの大まかな流れをご紹介しました。

前回の記事はコチラ→https://blog.jw-oomiya.co.jp/kyoto/71323

今回はその中からさらに一歩踏み込んで、ケースの元となる「サファイアクリスタルの原料」がどのようにして作られるのかを、わかりやすくご紹介したいと思います。

そもそもサファイヤクリスタルってなに?

サファイアクリスタルは、天然のサファイアとまったく同じ成分で作られた、透明度の高い人工の結晶です。

鉱物の硬さを表す「モース硬度」では、なんとダイヤモンドに次ぐ「硬度9」という圧倒的な硬さをを誇ります。
傷がとにかくつきにくく、とても丈夫な素材のため、最近では高級時計のガラス「風防」だけでなく、時計のケースそのものにも使われるようになってきました。

ただ、透明で頑丈なケースを作るまでの道のりは、決して簡単なものではありません。
【クストス】が採用しているのは、「ベルヌーイ法」と呼ばれる、伝統的でとても手間暇のかかる特別な結晶育成技術です。

ベルヌーイ法の工程

①原料はまるで小麦粉のような白い粉

サファイアクリスタルの原料となるのは、酸化アルミニウム、いわゆる「アルミナ」という白い粉です。
見た目は本当に小麦粉や上白糖のようで、店頭で見かける光沢のある透明なケースになるとは、とても信じられない姿をしています。この粉末こそが、あの美しい輝きの出発点です。

②3000度の炎の中で、丸一日かけて結晶に

「ベルヌーイ法」では、このアルミナの粉末を、なんと3000度近い水素と酸素の炎の中に少しずつ落としていきます。
粉末は炎の熱で瞬時に溶け、下で待ち受ける種結晶の上にポタポタと滴り落ちては、また溶けて固まる、、、という工程をひたすら繰り返します。

これを丸1日かけて続けることで、結晶が少しずつ縦に伸びていき、最終的には約10cmほどの円柱状の原石(ボウル)が出来上がります。炎の中でじっくりと、でも着実に結晶が育っていく様子は、まさに職人と自然現象との共同作業といえます!

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写真で見ても、はじめは細いろうそくみたいだったものが、だんだん丸み帯びた円柱に成長していく過程がよくわかりますよね。

③「急成長」ゆえの脆さと、それを癒す1週間

ただ、こうして人工的に急成長させた結晶には、ひとつ大きな弱点があります。一気に育ったぶん内部に歪みが残りやすく、そのままではとっても脆くて、ちょっとした衝撃で割れてしまう可能性があるんです。

そこで欠かせないのが、もう一度じっくり熱を加えて内部の歪みをほぐしていく「アニーリング(熱処理)」という工程です。
この熱処理にかかる時間は、なんとおよそ1週間!急いで作られた結晶を、今度は時間をかけてゆっくりと落ち着かせていきます。この地道で根気のいる工程があって初めて、普段安心して使える強さを持ったサファイアクリスタルへ生まれ変わります。

③円柱から「モノブロック」へ、そしてケースへ

こうしてしっかり安定した約10㎝の円柱は、このあと何個分かに輪切りにされます。これがケースの元となる「モノブロック」と呼ばれる状態です。

ここから先は、以前の記事でもご紹介した通り、高精度のダイヤモンドブレードでスライスしたり、CNCマシンでケースの形に削り出したり、何段階も研磨を重ねて仕上げていきます。特に【クストス】らしい立体的なトノー型ケースを作るには、すごく精密な技術が必要で、複雑な面を一つひとつ美しく仕上げるには熟練の職人技が欠かせません。

硬いけど、無敵ではない

日常使いではほとんど傷がつく心配がなく、鍵やコイン、ナイフなどが触れてもしまっても綺麗な状態を保てるサファイアクリスタル。

ただ、その一方で「硬くて傷には強いけど、強い衝撃には注意が必要」という一面もあります。

硬度が高い分、強い衝撃が1か所に集中してしまうと、ひび割れや破損につながることがあるんです。そのため硬い床におとしてしまったり、金属と強くぶつけてしまったりしないよう注意が必要です。

「硬さと微細さ」の両方を併せ持つ特別な素材だからこそ、前述したような丁寧な熱処理と熟練の職人技がどうしても欠かせないんです。

見えない工程にこそ、価値がある

普段私たちが目にするのは、透き通ったケースの中でムーブメントが美し動いている完成された姿です。

でも、その姿にたどり着く前には、3000度の炎の中で丸1日かけて育てられる結晶や、それをじっくりと癒すための1週間という、想像以上に長い時間と手間をかけた背景が存在しています。

【クストス】のサファイアクリスタルケースを実際に手に取る際は、ぜひこうした誕生の背景にも思いを馳せてみてください。
時計の輝きや深みが、きっとまた一段と違って見えるはずです。

投稿者:龍野