「複雑時計の女王」キャロルカザピはご存知ですか?カルティエで29個もの新しいムーブメントを設計した業界きっての天才をご紹介!
皆様こんにちは。
いつもoomiya京都店のブログをご覧いただきありがとうございます。
近年、時計業界で急速に存在感を高めている人物がいます。
それが今回ご紹介する「キャロル・カザピ」という方。
この人のことを知っている人はどれくらいいるのでしょうか。
この女性が手掛けた時計は知らず知らずの間に誰もが「知っている」または「持っている」ものばかり。
ぜひ最後までご覧ください。
キャロル・カザピってどんな人?
キャロル・カザピは、スイス時計業界で長年複雑機構の開発に携わってきた時計技師です。
彼女は時計職人というよりも、「ムーブメント設計者」として非常に高い評価を受けています。
設計・開発・試作・量産までを統括できる数少ない人物であり、数々の革新的なムーブメントを世に送り出してきました。
その才能から現在では世界中のコレクターから注目されています。

時計師には大きく分けて
- デザインが得意
- 組立が得意
- 設計が得意
というタイプがあります。
その中でキャロル・カザピは設計能力が突出している時計師です。
しかも
- 芸術性
- 実用性
- 生産性
この三つを高いレベルで成立させています。
超複雑機構は一品物で終わることも少なくありません。
しかし彼女は実際に量産可能なムーブメントとして完成させる能力を持っています。
これは技術的な進化が進んでいる、現代時計業界でも極めて珍しい能力と言われています。
生み出してきた名作の数々
キャロル・カザピ氏がこれまで手掛けてきたムーブメントは、時計愛好家に知られる独立系ブランドから世界的なラグジュアリーブランドまで多岐にわたります。
その名を世界中の時計業界に知らしめた代表作が、ユリス・ナルダンの革新的なタイムピース「フリーク」に採用されたカルーセル機構です。アブラアン-ルイ・ブレゲ生誕250周年を記念して開催された設計コンペティションにおいて、この機構で最高賞となるブレゲ賞を受賞。卓越した技術力と独創性が高く評価され、一躍注目を集めました。

ゼニスでは薄型自動巻きムーブメント「エリート」の開発に携わり、高い完成度を誇るベースムーブメントを生み出します。
さらに約20年間在籍したカルティエでは、「アストロトゥールビヨン」をはじめとする複雑機構の開発を主導。加えて、現在では”リシュモンムーブメント”の礎ともいえる自社製キャリバー「1904 MC」や「1847 MC」の設計も担当しました。これらのムーブメントは、カルティエがジュエリーメゾンから本格的なマニュファクチュールへと飛躍する大きな原動力となり、ブランドの時計製造における地位を確立する重要な役割を果たしています。
実際にはどの時計に使われている?
キャロル・カザピ氏がカルティエで設計を手掛けた「1847 MC」は、その後のリシュモングループにおけるムーブメント開発の礎となったキャリバーです。
この設計思想を受け継ぐ共通プラットフォームは、リシュモングループのムーブメント製造会社ヴァル・フルリエによって製造され、各ブランドごとに独自のチューニングや仕様変更が施されています。

代表例が、IWCのCal.32111です。IWCでは「IWCマニュファクチュア・キャリバー」と位置付けられていますが、その設計・製造にはヴァル・フルリエの共通プラットフォームが活用されています。香箱や輪列を最適化することで約120時間(5日間)のロングパワーリザーブを実現し、「マーク XX」「インヂュニア・オートマティック 40」「アクアタイマー」などの人気モデルに搭載されています。

同じ系譜のムーブメントは、ボーム&メルシエでは「ボーマティック(BM12/13-1975A)」として展開。COSC認定クロノメーターを取得し、シリコン製TwinSpirヒゲゼンマイを採用するなど、高精度・高耐磁性能を追求しています。
さらにパネライでは「P.900」として採用され、「ルミノール」や「サブマーシブル」をはじめとする主力コレクションに幅広く搭載されています。近年のモデルチェンジでは、ケースの薄型化と防水性能の向上(300mから500mへ)を両立できた背景にも、このコンパクトなP.900の存在が大きく貢献しています。

こうした各ブランドへの展開を可能にした理由は、ベースとなる「1847 MC」が薄型かつ高い拡張性を備えた設計であったことにあります。共通の基本設計を活かしながら、それぞれのブランドが独自の性能や個性を付加できる優れたプラットフォームとして、現在もリシュモングループの中核を担っています。

もちろん、キャロル・カザピ氏の功績はリシュモングループだけにとどまりません。
革新的な機構で時計史に名を刻んだユリス・ナルダン「フリーク」のカルーセル機構をはじめ、ゼニス「エリート」のような薄型ムーブメント、さらにはタグ・ホイヤーで開発に携わったトゥールビヨンなど、ブランドの垣根を越えて数々の名機を世に送り出してきました。
一人の時計技術者が手掛けたムーブメントが、これほど多くのブランドの個性を支え、それぞれ異なる進化を遂げている例は決して多くありません。キャロル・カザピ氏は、現代スイス時計界を代表するムーブメント設計者の一人と言っても過言ではないでしょう。
もう一度注目したい【ゼニス】での功績
ゼニスと聞いて、多くの人が真っ先に思い浮かべるのは「エル・プリメロ」ではないでしょうか。実際、「ゼニス」と「エル・プリメロ」はセットで語られることが多く、世界初の自動巻きクロノグラフとして時計史に名を刻んでいます。
一方で、その陰に隠れながらも高い評価を受け続けているムーブメントがあります。それが、キャロル・カザピ氏が開発を手掛けた「エリート」です。


かつてのゼニスでは、クロノグラフにはエル・プリメロ、シンプルな3針モデルにはエリートという明確な役割分担がありました。エル・プリメロがブランドの象徴である一方、エリートは日常使いに適した薄型・高性能ムーブメントとして、多くのモデルを支えてきたのです。

しかし近年、「デファイ スカイライン」に3針仕様のエル・プリメロが採用されたことで、この住み分けは徐々に変化。エリートを搭載するモデルは減少し、その存在を目にする機会も少なくなりました。
とはいえ、時計愛好家の間では「エリート」の評価は今なお非常に高く、その名に恥じない完成度を誇ります。
1994年のバーゼルフェアでは、完成したエリートが「年間最優秀ムーブメント」に選出され、クォーツショックからの復活を目指していたゼニス再興の大きな原動力となりました。

また、「エリート」は単一のムーブメントではなく、一つの設計思想から生まれたムーブメントファミリーでもあります。直径11.5リーニュ(25.60mm)の基本設計を共有しながら、厚さわずか2.83mmの手巻きCal.650から、複雑機構を搭載したCal.687まで、20種類を超えるバリエーションへと発展しました。
この優れた拡張性こそ、キャロル・カザピ氏の設計思想を象徴するポイントです。
薄型で高い完成度を持ちながら、用途に応じて自在に発展させられる設計は、後にカルティエの「1847 MC」やリシュモングループの共通プラットフォームにも受け継がれていきます。


「エル・プリメロ」がゼニスを象徴するムーブメントだとすれば、「エリート」はキャロル・カザピ氏の設計哲学を最も色濃く映し出したムーブメントと言えるでしょう。派手さはなくとも、その完成度と汎用性の高さは、現在の高級時計業界にも確かな影響を与え続けています。
エリートが採用されている希少な2026年新作時計をご紹介
ゼニスでは数年前まで、「エリート」はムーブメントの名称であると同時に、「クロノマスター」や「デファイ」と並ぶコレクション名としても展開されていました。
しかし現在では、「エリート」コレクションを目にする機会は大きく減り、エリートムーブメントを搭載したモデルも限られた存在となっています。
そんな中、今あらためて注目したいのが、「デファイ スカイライン 36」や「デファイ リバイバル A3643」といった、36〜37mmケースの3針モデルです。

近年の時計市場では、腕なじみの良いコンパクトなケースサイズが人気を集めています。そのトレンドに応えるこれらのモデルを支えているのが、薄型かつコンパクトな設計を誇る「エリート」ムーブメントです。優れた設計だからこそ、快適な装着感と美しいケースプロポーションを両立しています。


シースルーバックから覗くムーブメントは、華美な装飾で魅せるタイプではありません。しかし、整然としたレイアウトや丁寧な仕上げからは、ゼニスらしい実直なものづくりと、キャロル・カザピ氏の設計思想を感じ取ることができます。
派手な「エル・プリメロ」の陰に隠れながらも、30年以上にわたりゼニスを支え続けてきた名機「エリート」。
ぜひ店頭で、その完成度の高さと美しさを、ご自身の目で確かめてみてください。


